おしぼりうどん

おしぼりうどんという料理を聞いたことがある人はたぶん信州にゆかりのある人だけだろうと思います。うどんには変わりないのですが、タレは大根おろしの絞り汁に味噌とネギなどの薬味を入れて、ざるそばのように、釜揚げうどんを入れてそのまま食べます。もちろん釜揚げでは無くて、冷やして食べるのもありで、私自身はそちらの方が好みです。                                   大根は普通の大根ではイマイチで、信州の坂城(さかき)町特産のネズミ大根を使うのが正統派です。なんでねずみ大根というのかというと、その形がネズミに似ているかららです。信じられないかも知れませんが、その坂城町には”ねずみ”という地区があって、そのあたりで採れるのでねずみ大根というのかも知れません。あるいはねずみ大根が採れる地域だから”ねずみ”という地名が付いたのかも知れませんが、卵が先か鶏が先か見たいな話しで、本当のところはよくわかりません。なお、地名のねずみの発音は動物のネズミとは多少ちがって、”ね”にアクセントがあります。

*ねずみ大根。確かにネズミに似ています。味はかなり辛みが強く、これが信州みそと混ぜると、絶妙なうどんのタレがが出来上がります。極めてシンプルな健康食とも言えます。

このおしぼりうどんを食べさせてくれるところが新橋にありました。店の名前は”おにかけ”。おにかけ、というのも信州の食べ物ですが、おにかけとは“お煮かけ”のことで、野菜や肉などを煮込んだ煮汁の中にうどんやそうめんを入れて、煮汁を切って食べます。スープが少な目のにゅう麺とかうどんといった感じでしょうか。         でもその店には”おにかけ”も”おしぼりうどん”もメニューには書いてありません。 たぶん仮に書いてあっても客は何のことか分からないでしょう。           おにかけというメニューは本当に無くて、釜揚げうどんというメニューがあって、それがすなわちおしぼりうどんのことだそうです。   

*右手で持とうとしている徳利が大根の搾り汁。その脇の3つの肉団子のようなものが信州みそです。

 子供のころは、おしぼりうどんなどちっともおいしいとは思わなくて、おしぼりうどんの日には姉なんかと別のものを作って食べたりしていた思い出があります。”女・子供”などといったら今では叱られるでしょうが、男と女、あるいは大人と子供では好みの味が違うのも事実で、このうどんの味は大人の(男の?)味と言っていいでしょう。           東京にこんな店はあるけれど、おしぼりうどんもおにかけももう地元でも食べられていないかも知れません。ねずみ大根はたくあん漬けにするとこれまた絶品なんですが、さすがにたくあん漬けは時間と手間がかかるので、今度の帰国時には坂城町まで買いに行って、おしぼりうどんでも作ってみようか。 

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