スズキの卵でからすみを仕込み始めてからも、ボラの卵でからすみで作ってみたいとの思いは捨てがたく、翌週もフェーラ(市場)に行ってみました。 2件目の魚屋に、年配の日本人らしきおばちゃんが居たので、いきなり「ボラの卵ありますか?」と聞いたら「今週は入ってないね」。 うれしいことに日本語は完璧に通じました。でも、ショウケースの先を眺めて行くとボラの卵らしいものが置いてったので、「これってボラの卵じゃないの?」とそのおばちゃんに聞いてみると、「それあんまり新しくないんだよ。おいしくない。」 なんと自分が売っている商品をキッパリ否定してきました。 「それって、売れ残りって意味?」と聞くと、「そう、先週入ったものでちょっと古い」。私が日本人なので、魚にうるさいとみて正直教えてくれたのだろうか? この短いやり取りで、私はこのおばちゃんの言うことを信用することに決めました。 「今度来る前にここに電話して、ボラが入っているかどうか確認したらいいよ」と、名刺をくれました。 「名前は何て言うの?ボラが入ったら連絡してあげるから電話番号教えて」 彼女の名前はTakakiさん。名刺にはPescados Takakiとあったので、Pescadosがファーストネームかと思いきや、それは魚屋を意味するポルトガル語でした。 「ポルトガル語ダメ?」 「もう覚えられないよ。覚える気力も無くなってきたし」 「いつ来たの?ここに居たらすぐ覚えるでしょう」 「若かったらね。とにかく連絡待ってます、よろしく」
翌週も連絡はなかったけど、野菜や果物の買い物もあったのでTakakiさんの魚屋によってみると、「あ、ボラの卵ね、今週も入んなかった」 「いや、いいんですけど、今日はなにかいい魚ないですか?干物にしたいんだけど」 「うーん、じゃカレイなんかどう?さっきさばいたばかり」 「えっ?カレイがあるですか?じゃ是非それ一つください」 もう実物も見ずに即注文しました。信用しているということもありますが、実際カレイを干物や煮物にしたくて(唐揚げもいいですが)買えないものかと思っていたところでした。 一塩したカレイの干物は、えんがわもついていて、たんぱくな白身ではあっても味わい深く、また日本語が出来て信頼できる魚屋さんに出会えたことがさらに味を引き立ててくれているようにも感じたのでした。